怒りを「危険」「守りたいもの」「大切なもの」「自分の価値観」「自分の本当の気持ち」「自分の理想」「自分の欲求」などを教えてくれるサインとして私たちがキャッチできれば、自分を理解するための大切な感情として扱うことができます。
とはいえ、「いくら怒りは大切な感情と言われても・・・」と、なんか実感できないという方もいらっしゃるかと思います。
今回は「この厄介な怒りの感情はどこからやってくるか?」について考えてみます。
①怒りを感じるとき
人が怒りを感じるときには、大きく分けて二つの要素があります。一つは「被害にあった」という感覚です。物理的被害だけでなく、むしろ「プライドが傷ついた」などの心理的被害のほうが日常的な怒りでは重要な意味を持っています。
日常生活の中で怒りを感じる原因の多くは「相手の自己中心的な態度」「約束の破棄、裏切り」「侮辱・無礼な態度」といった心理的被害がほとんどです。
怒りを感じる時には被害だけではなく、もう一つ重要な要素として「加害者の責任性の判断」があるからです。怒りの発生には単に被害にあっただけではなく、「その被害の責任が特定の他者にある」ということが条件となります。自分が嫌な思いをして、かつ、誰かのせいでそうなったと感じた時に怒りを感じます。
怒りはある意味で個人の「思い込み」に基づいて生じる感情です。人によって「怒りっぽさ」に違いがある理由の一つは、状況判断に個人差があるためと考えられています。
つまり、怒りっぽい人というのは普通の人よりも被害や責任性大きく評価しやすい人であり、反対に怒りっぽくない人はそうした要素を小さく評価しやすい人といえます。
しかし、疑問として生じるのは私たちは被害や加害者の責任性を毎回きちんと判断して、怒りを感じているのかということです。攻撃行動に関する研究によると、十分な認知処理を介さない衝動的な怒りのプロセスが働いているためと考えられています。
あらゆる攻撃行動の基盤には必ず欲求不満が存在し、また欲求不満には常に何らかの攻撃を引き起こすとされています。
では、自分の怒りの表出を正当だと感じやすいのはどのような人なのか。その一つとして考えられるのは自己愛傾向です。自己愛傾向の人は自分自身への関心の集中と、自信や優越感などの自分自身の肯定的感覚、さらにその感覚を維持したいという欲求によって特徴づけられています。
アンガーマネジメントとは「怒る必要があることを上手に怒れ、怒る必要がないことは怒らないようになる」ことです。
アンガーマネジメントは決して怒らない人になることではありません。
「怒る必要があることと、怒る必要のないことの境界線が引けるようになる人」をめざしていきます。
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